【歩き編 第7話】歩く力は、筋力だけでは決まりません
私はこれまで、数多くのリハビリの現場で患者さんと関わってきました。
その中でも印象に残っているのが、90代の女性です。
肺炎と心臓の疾患で救急搬送され、全身の筋力が低下し、命に関わる状態でした。
最初は「女性のセラピストがいい」と希望されていましたが、お話をした後に「あなたにお願いしたい」と言ってくださり、担当することになりました。
その方には、一つだけ強い想いがありました。
「家に帰りたい。」
「もう一度、自分で食事を作りたい。」
この明確な目標がありました。
もちろん、リハビリで身体を動かし、筋力を回復させることは必要です。
しかし、それだけではありません。
「家へ帰りたい」という想いが、その方の回復を大きく支えていたのです。
そして約1か月後、その方は自宅へ退院されました。
私はこのような症例を何度も経験してきました。
高齢だから。
筋力が落ちているから。
それだけでは説明できない回復が、実際に数多くあるのです。
だから私は、「歩く力」は筋力だけでは決まらないと考えています。
身体。
心。
意欲。
生きる目的。
そして、その人自身の本音や、生き方。
それらは互いにつながりながら、人の回復に影響しています。
私はよく「すべては一つ」という考え方を耳にします。
その考え方を否定するつもりはありません。
ただ、私自身は、一つひとつにはそれぞれ役割があり、それらが互いにつながっていると考えています。
身体だけ整えても十分ではありません。
心だけでも足りません。
エネルギーや波動だけでも、人は歩けるようにはなりません。
私はエネルギーの調整も行います。
しかし、それだけで身体が動くようになるとは考えていません。
人は栄養を摂り、身体を動かし、休息し、必要な医療を受けながら回復していきます。
実際に私は、点滴しかできなかった方が食事を摂れるようになり、表情や意識がはっきりし、身体が元気になっていく姿を数え切れないほど見てきました。
一方で、呼吸や気の流れ、プラーナなど、エネルギーという視点も確かに存在すると私は考えています。
しかし、それは数ある要素の一つです。
どれか一つだけですべてを説明したり、解決しようとするものではありません。
だからこそ私は、身体・心・エネルギー・魂・生き方、それぞれを総合的に見ていくことが大切だと考えています。
歩くということは、単に足を動かすことではありません。
その人が、自分らしい人生をもう一度歩み始めることでもあります。
私は、そのためのお手伝いをこれからも続けていきたいと思っています。
