【第2話】身体には本当に記憶が残るのか? 理学療法士の臨床
【身体・感情・記憶をたどる7話シリーズ】
第1話
本音を伝えたことで、腰痛が変わった20代男性
第2話
身体には本当に記憶が残るのか?【今回】
第3話
身体と感情は、どのようにつながっているのか
第4話
過去の記憶が身体に残るとはどういうことか
第5話
エネルギーは身体にどう影響するのか
第6話
霊性と身体の関係
第7話
身体・心・魂・霊的影響を総合的に見る理由
前回のあらすじ
前回は、進路への迷いを抱えていた20代男性が、本音を伝えて方向性を決めたことで、腰痛も変化した症例をご紹介しました。
この経験から私は、身体には感情や記憶も関係しているのではないかと考え始めました。
理学療法士として働いていた頃、私は脳梗塞や脳出血などを経験された方のリハビリにも携わっていました。
現在では、脳には新しい神経の通り道を作っていく力があることが分かっています。
実際にリハビリを続けることで、動かなかった手足が少しずつ動くようになったり、以前に近い動作を取り戻したりする方もいました。
しかし、同じような病気や症状でも、回復の仕方は一人ひとり違います。
ある瞬間、以前と同じような滑らかな動きが出る方もいれば、途中から別の動き方を身につける方もいます。
一度できた動作が、次にはうまくできないこともあります。
身体は単純に筋力だけで動いているわけではありません。
脳から身体へ送られる信号。
感覚。
過去に繰り返してきた動作。
本人が身体をどのように認識しているか。
さまざまな要素が関係しています。
骨折や転倒を経験した方にも、似たことが起こります。
骨自体は治っている。
筋力も戻ってきている。
それでも、転んだ時の恐怖が残り、足がすくむことがあります。
「また転ぶかもしれない」
そう思った瞬間に身体が固まり、本来なら歩けるはずの場所でも足を出せなくなるのです。
私自身も骨折と手術を経験しています。
動かせる状態まで回復しても、ボールを触ることが怖かった時期がありました。
痛みが出る前から身体が緊張する。
また同じことが起きるのではないかと、無意識に身構える。
この経験からも、身体には出来事の記憶が残ることを実感しました。
また、臨床では、昔の大きなケガや手術が影響しているように見える方もいました。
現在の検査だけでは大きな問題が見つからなくても、動きに制限が残っている。
特定の姿勢になると、昔と同じ場所に痛みが出る。
身体が、その時の状態を今も覚えているように見えることがあったのです。
もちろん、心理学では恐怖や認知の問題として説明できる部分があります。
しかし私は、それだけでは説明しきれない何かがあると感じていました。
本人が頭では「もう大丈夫」と理解していても、身体は反応する。
意識では忘れたと思っていても、ある動きや状況をきっかけに、身体が先に反応する。
だから私は、
身体には、頭で覚えている記憶とは違う形の記憶が残るのではないか
と考えるようになりました。
この頃から、私は西洋医学や理学療法だけでなく、心理学や東洋医学など、別の分野も学び始めました。
一つの理論だけで人を説明するのではなく、身体・感覚・心を含めて見る必要があると感じたからです。
まだ、この時点では答えにたどり着いていません。
ただ、臨床を重ねるほど、
身体は骨や筋肉だけで成り立っているわけではない
という考えは強くなっていきました。
次回予告
次回は、身体と感情がどのようにつながっているのか、実際の症例を通してお話しします。
前回
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