身体が元に戻れば、本来の自分へ戻れるのか?
理学療法士として働いていた頃、脳梗塞を発症した60代の男性に関わったことがあります。
発症から約1か月。
もともと経営者で、自宅ではある程度歩けるまで回復し、施設に来られたときも杖を使えば歩くことができました。
当時の私は、
「まだ若いから、ここからもっと回復する」
と考えていました。
感覚を入れる練習。
神経や筋肉への電気刺激。
筋力や動作の練習。
身体の反応を確認しながら、さまざまな方法を試しました。
身体は変わりました。
屋内では杖なしで歩けるようになりました。
できることも増えました。
それでも、私が想像していたほどには元の状態へ戻りませんでした。
何が足りなかったのか
当時の私は身体を中心に考えていました。
自主トレーニングが足りなかったのか。
食生活なのか。
体重なのか。
リハビリの方法なのか。
自分の技術や知識が足りなかったのか。
今振り返っても、答えは一つには決められません。
そして、今の私が施術したとしても、
「もっと回復させられる」
とは言えません。
できることもあれば、できないこともあります。
ただし、今の私なら身体とは違うところも確認します。
身体とは別に気になっていた「お金への不安」
この方を振り返ったとき、身体機能とは別に印象に残っていることがあります。
お金について強い不安を持っていたことです。
自分で店を大きくし、その後の事業にもつなげていました。
少なくとも私から見れば、生活そのものが成り立たない状態には見えませんでした。
それでも、お金について強く気にしていました。
発症前には、不安から寝ずに携帯で情報を見ていたこともあったと聞きました。
だからといって、
「お金への不安が脳梗塞を起こした」
という話ではありません。
私は発症前のこの方を知りませんし、原因をそこへ結びつけることもできません。
ただ、今の私なら確認すると思います。
何と比べているのか。
もっと稼がなければならないと思っているのか。
何を失うことが怖いのか。
何を手に入れれば安心できると思っているのか。
そして、本当はどのような生活をしたいのか。
身体を整えるだけでは終わらない
現在の陰陽整体では、身体だけではなく、その人の状態をもう少し広く確認します。
身体の状態。
本人の感覚。
思考や感情。
人間関係や現在の生活。
そして必要に応じて、身体周囲のエネルギーの偏りや霊的・エネルギー的な干渉についても確認します。
ただし、それらのどれか一つを「原因」と決めるためではありません。
まず、その人の状態を整える。
そして本来の自分へ戻ってきたところで、今ある現実をもう一度確認する。
ここを私は大切にしています。
「元に戻る」だけが答えではない
この方は、脳梗塞によって身体に不自由が残りました。
それを、
「病気になってよかった」
と考えることはできません。
病気にこちらから意味をつけることもできません。
失ったものもあります。
元に戻せないこともあります。
一方で、発症後のこの方には、私が意外に感じた一面もありました。
身体に不自由があっても、必要以上に落ち込み続けているようには見えませんでした。
だから今なら、
「どうすれば発症前の状態へ戻れるのか」
だけではなく、
「今ある現実の中で、これから自分はどう生きたいのか」
も一緒に確認すると思います。
周囲との比較を続けるのか。
もっと得ることを選ぶのか。
今すでにあるものをどう感じているのか。
仕事をどうするのか。
これからどんな生活をしたいのか。
答えはこちらが決めるものではありません。
本人が確認し、選択する。
そして日常で実践してみる。
次に会ったとき、その選択によって何が変わったのか、新しい違和感が出ていないかをもう一度確認する。
身体が元通りになることと、本来の自分へ戻ることは、必ずしも同じではありません。
身体を整えた先で、今ある現実を見て、自分がこれからどう生きたいのかを選び直す。
私は現在、そこまで含めて陰陽整体だと考えています。
身体について学び、いろいろ試してきても、なぜか自分自身の不調には対処しきれない。
身体の不調の背景には何があるのか。
人と深く関わる仕事をしている人自身が、不調を抱えるのはなぜなのか。
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