本人の希望をそのまま叶えることが、本当に支えることなのか?
人を支える仕事をしていると、相手の希望を大切にしようと考えます。
本人が何を望んでいるのか。
何をできるようになりたいのか。
どうなりたいのか。
その希望を聞くことは必要です。
しかし、本人が希望する方法を、そのまま実現させることが本当に支えることなのでしょうか。
以前、脳卒中後の男性を担当したとき、このことを考える経験がありました。
息子の結婚式に歩いて出席したい
この方は2回目の脳卒中によって、身体の状態が大きく変わりました。
特にバランス能力の低下が目立ち、最初は立つことにも介助が必要でした。
リハビリを続ける中で、徐々に歩けるようになっていきました。
そして本人には、
「息子の結婚式に歩いて出たいんじゃ」
という希望がありました。
できれば杖を使わずに歩きたい。
私はその希望を大切にしながら関わっていました。
しかし、歩行能力が改善しても、転倒の危険性は残っていました。
そこで考えたのが、
この方が本当に望んでいることは何なのか。
ということでした。
杖なしで歩くことなのか。
それとも、息子の結婚式に出席することなのか。
もちろん、杖なしで歩くこと自体にも本人なりの意味があったと思います。
ただ、結婚式に出席するという目的を考えたとき、杖を使うことも一つの方法でした。
私はそのことを本人に伝えました。
希望する方法と、実現したいことは同じではない
人は何かを実現しようとするとき、そのための方法を考えます。
もっと身体を鍛える。
もっと技術を学ぶ。
もっと仕事を頑張る。
もっとお金を稼ぐ。
もちろん、それらが必要な場合もあります。
しかし、方法ばかりを見ていると、
そもそも何のために、それをしようとしているのか。
そこが見えなくなることがあります。
今回の男性にとって、杖なしで歩くことは大切な希望でした。
しかし、その先には息子の結婚式に出席したいという目的がありました。
その目的を考えたとき、杖を使うという別の選択肢も出てきました。
これは本人の希望を否定することではありません。
本人が本当に実現したいことを確認し、そのための方法を一緒に考えることです。
現在の陰陽整体でも、答えをこちらが決めるわけではない
この考え方は、現在の陰陽整体にもつながっています。
陰陽整体では、身体の状態を確認し、必要に応じて身体周囲のエネルギーの偏りや、霊的・エネルギー的な干渉についても確認します。
状態を整え、本来の自分へ戻していく。
ただし、そこが最終的な目的ではありません。
そのあとに現実を確認します。
例えば、
今の仕事を続けたい。
人間関係を変えたい。
もっと収入を増やしたい。
自分の時間を取り戻したい。
そうした希望があったとき、
「では、そのために何をすればいいのか」
と方法だけを考えるのではありません。
なぜ、それを望んでいるのか。
その先で、どのような生活をしたいのか。
何を大切にしたいのか。
今の自分は何と比べているのか。
そこまで確認することがあります。
もちろん、私が、
「あなたの本当の望みはこれです」
と決めるわけではありません。
本人が自分自身で確認していくことが必要です。
本人の希望を尊重することと、すべてに合わせることは違う
専門職として関わる中で、本人が希望している方法に危険性や難しさがあると感じることもあります。
そのとき、相手に合わせ続けることが信頼関係なのでしょうか。
私はそうは考えていません。
本人の希望を聞く。
現在の状態を確認する。
必要なことを伝える。
別の方法があれば提案する。
そのうえで、本人が選ぶ。
相手の希望を否定することと、別の可能性を伝えることは違います。
また、相手の希望を大切にすることと、相手の選択までこちらが背負うことも違います。
施術者ができることと、本人が選ぶことには境界線があります。
私はその境界線も大切にしています。
何を実現したいのかを確認し、そこから選ぶ
今回の男性は、結婚式を迎える準備をして退院されました。
しかし、結婚式の直前に救急搬送され、亡くなられました。
本人の希望が実現したわけではありません。
だからこそ、この方との関わりは今でも印象に残っています。
私は、病気やその後に起きた出来事に、こちらから意味をつけることはできないと思っています。
ただ、この方との関わりから学んだことがあります。
目の前にある目標だけではなく、その先で何を実現したいのかを見ること。
そして、そのために必要な方法を一つに決めないことです。
現在の陰陽整体でも、状態を整えたあとに現実を確認します。
何を続けたいのか。
何を変えたいのか。
本当はどう生きたいのか。
そこから本人が選択し、日常で実践する。
次に会ったときには、その選択によって何が起きたのか、新たな違和感がないかを確認します。
「何をしたいのか」だけではなく、「それを実現することで、どのように生きたいのか」。
私は現在、そこまで確認することを大切にしています。
身体について学び、いろいろ試してきても、なぜか自分自身の不調には対処しきれない。
身体の不調の背景には何があるのか。
人と深く関わる仕事をしている人自身が、不調を抱えるのはなぜなのか。
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