【第3話】痛みがあるから歩けない。本当にそうなのでしょうか。
前回は、手術を先延ばしにすることについてお話ししました。
今回は、「痛みがあるから歩けない」ということについて、理学療法士としての経験を交えながらお伝えします。
まず、痛みがあることは決して悪いことではありません。
私自身、指を粉砕骨折し手術を経験しました。
手術後は、動かす時だけではなく、リハビリが終わった後もズキズキと痛み、熱感も強くありました。
「本当に元に戻るのだろうか。」
そう思う日も何度もありました。
しかし、少しずつ身体を動かし続けることで、時間はかかりましたがスポーツができるところまで回復しました。
臨床でも同じようなことを数多く経験しました。
レントゲンでは膝や股関節の変形がはっきり写っていても、元気に歩いている方がおられます。
一方で、画像上はそこまで大きな異常がなくても、歩くことが怖くなり、ほとんど動けなくなってしまう方もおられます。
つまり、痛みだけで歩ける・歩けないは決まらないのです。
では、手術後でも回復される方にはどのような特徴があるのでしょうか。
私が感じてきたのは、「目標がある人」です。
「家に帰りたい。」
「旅行へ行きたい。」
「孫と一緒に歩きたい。」
このような目標を持っている方は、痛みがあっても少しずつ前へ進もうとされます。
もちろん、それだけではありません。
手術前からどれだけ身体を動かしていたか。
心臓などの持病はあるのか。
年齢や体力。
そういったことも回復には大きく関わってきます。
逆に、痛みがそれほど強くなくても動けなくなる方もおられます。
その一つに、「痛みへの恐怖」があります。
過去に強い痛みを経験すると、「また痛くなるかもしれない」という記憶が身体に残ることがあります。
これは本人が弱いからではありません。
骨折や手術、転倒などの強い体験は、身体だけでなく記憶にも残るからです。
私自身も、指が動くようになってからもしばらくは、ふとした瞬間に当時の痛みを思い出すことがありました。
だからこそ、無理をするのではなく、「ここまでは大丈夫」という範囲を少しずつ広げていくことが大切なのです。
最後に、一人の症例をご紹介します。
70代の男性で、しびれのため杖を使い、約10分しか歩けなかった方がおられました。
整体と自主運動を続けた結果、杖なしで40分歩けるまで回復しました。
しかし、ご本人はこう言われました。
「私はまだ良くなっていません。」
身体は確実に変わっていました。
歩ける距離も大きく伸びていました。
それでも、ご本人の中では「まだできない」という思いが強かったのです。
この経験から私が学んだことがあります。
回復とは、身体だけの問題ではありません。
痛み。
身体。
記憶。
考え方。
目標。
それらがすべて関わっています。
だから私は、「痛みがあるから歩けない」と一つの原因だけで考えることはしません。
その人全体を見ながら、一緒に回復への道を考えていくことを大切にしています。
次回は、「家族との関わりで回復は変わるのか」というテーマについて、実際の臨床経験をもとにお話しします。
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